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皆様、私は日本国衆議院議員の自由民主党の鈴木恒夫でございます。昨年7月に初めて日本で結成された核軍縮議員ネットワーク・日本の代表を務めております。本日はこのネットワークに参加されている民主党の中川正春衆議院議員と二人で、日本の与野党を代表する形でこの長崎フォーラムに初めて参加することになりました。
パネリストとしてただ今発言されたダグラス・ロウチ、ケース・ロック両氏をはじめ、海外から参加された皆様に歓迎の意を表するとともに、被爆地・ナガサキでのこの集いが、いっそう深刻な危機感を抱かざるを得ない全世界の核兵器をめぐる情勢に、新たな一筋の希望の光を生み出す契機となることを、皆様と共に願うものであります。
一瞬にして信じ難い数多くの尊い命がせん(閃)光の中に消えたこの地を訪れて、あらためて思い起こすのは、核兵器をはじめとする軍縮問題に生命を捧げた故宇都宮徳馬衆院議員の言葉であります。
一瞬にして信じ難い数多くの尊い命がせん(閃)光の中に消えたこの地を訪れて、あらためて思い起こすのは、核兵器をはじめとする軍縮問題に生命を捧げた故宇都宮徳馬衆院議員の言葉であります。
彼が設立した宇都宮軍縮研究室が1980年に発刊し、今日まで23年間にわたって毎月発行されている「軍縮問題資料」の表紙の裏ページにその言葉は毎号掲げられております。
『核兵器に殺されるよりも、核兵器に反対して殺されるほうを、わたしは選ぶ』
私はこの言葉をPNND日本に参加している議員の共通の言葉と認識したいと考えております。
わが国はかつての軍国主義による戦争への反省から現在の日本国憲法を制定し、第9条には「武力による威かく(嚇)又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」と明記されております。我々にはこの日本国憲法の理念が経済力の向上に伴って必然的にたどり着きやすい軍事大国化を防ぐ強固な壁となってきたとの思いがあります。故宇都宮先生の思想の原点がそこにあり、その思想の系譜は、たとえばこの度衆院議長に就任された河野洋平衆議院議員らによって引き継がれていると言えましょう。河野新議長は青年議員のころ、我が国が国是としてきた「核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず」という非核三原則を、自らが所属する政権政党・自由民主党の綱領に明記するよう求めましたが、核兵器に対してフリーハンドを持つべきだとする党の圧倒的多数意見の前に屈しました。この挫折感が1976年に政権党を離脱して「新自由クラブ」とい新政党を結成するという行動に彼を走らせたのであります。この時から日本における自由民主党による単独政権の時代は終焉し、政党政治の流動化時代が始まったと言えるのです。
わが国の政治は今、軍事・外交・防衛政策という側面から、これまでにない転換期に立ち至っていることを指摘したいと思います。例えばPNND日本の議員について申し上げれば、今回の総選挙前までの参加議員数は衆参両院で62人で、参加国26カ国のなかで最も多数でしたが、総選挙の結果、衆議院で15人の議員が落選もしくは引退し、総数は47人と激減してしまいました。国会から姿を消した議員は、それぞれが有力な核軍縮・護憲を主張していた人々です。
そして、皆様にはさらに日本の政治の新たな現象を指摘したいと思います。それは日本の衆議院における顕著な世代交代の流れです。なんと衆議院議員480人のうち、終戦の1945年8月15日以降に誕生した議員の比率は全体で63%。つまり3人のうち2人が戦後生まれの時代に入ったということです。野党第1党の民主党に至っては75%。4人のうち3人が戦後生まれ。わが自由民主党でさえ52%、半数以上が戦争を知らない議員の時代となったのです。
一方で新聞社の世論調査にも注目すべきデータがあります。読売新聞の調査では、新しい衆院議員の73%が憲法改正に賛成です。こうした変化を察知して、わが自由民主党は総選挙前の「政権公約」で2年後の2005年に新しい憲法草案をまとめることを明示しました。野党・民主党の中にも次第に改憲論が強まってくることは避けられそうにありません。改憲論がそのままわが国の外交・防衛・軍事政策の右傾化に直結するとは断言いたしませんが、憲法改正の問題はおそらくこれからの日本の『国のかたち』をめぐる最大の争点となっていくと思われます。
そうした日本の国内政治の動向に大きな影響を与えると思われるのは、わが国周辺の軍事情勢であります。もはや朝鮮民主主義人民共和国は明確な核拡散への動きを強固にしております。いわゆる「貧者の核」であるBC(生物・化学)兵器等の拡散への懸念も含め、わが国の安全保障にとってはいよいよ重大な脅威と認識されるに至りました。我々はこの「北」の動きが他の発展途上国に悪影響を及ぼし、北東アジア地域が核軍縮・核廃絶の理想に最も逆行する地域とならぬよう、多国間協議の場を通じ、わが国政府が平和的解決を先導するよう求めたいと思います。
世界に目を転じれば、東西両文明の衝突という深刻な事態の進行を背景に、小型核兵器(ミニ・ニューク)の研究をはじめとする米国政府の軍事政策の尖(せん)鋭化、新たな核拡散の可能性の深まりなど、世界は明らかに「平和」とは全く逆方向へと走り始めたといえるでしょう。しかし、唯一の被爆国であるわが国は、決して被爆の記憶を風化させることなく、平和憲法の精神を堅持し、国是として軍備管理・軍縮の実現を模索し続ける義務があります。世界紛争の主な原因の一つである「貧困」の撲滅に向け、人道的援助や経済的手段などを通じて世界の安定と発展に寄与すべきことも我が国の任務であります。たとえば、ODA(政府開発援助)の実施に当たって「核軍縮」を国の判断基準の一つに置くことも考慮されるべきです。
わが国はこれまで以上に、核保有国に対し核軍縮および究極的な核廃絶に向けた努力を要求し続けるとともに、途上国をはじめとする非核保有国に、核兵器保持のリスクを認識させ、国際的な核軍縮をめざす勢力の拡大に参加するよう働きかけを強めるべきだと確信します。こうした意味で私は国際NGO「中堅国家構想(MPI)」および「新アジェンダ決議案」の精神に、個人として賛同するものであります。
もちろん、医療、教育、環境、国土の復興建設といった非軍事的な国際貢献を活発化させることの必要性も、我々は日本政府に督促していく決意であります。小泉純一郎首相がヨハネスブルグ・サミットで提唱した「持続可能な開発のための教育の10年」はその典型的な課題でありましょう。
最後に私は日本の明治の文豪、夏目漱石が有名な小説「吾が輩は猫である」の中で、猫の口を借りて、人間の文明に痛烈な警告を発していたことをご紹介したいと思います。
ちょうど100年も前に、漱石はこう猫に言わせています。「わが輩は人間と同居して彼らを観察すればするほど、彼らはわがままなものだと断言せざるを得ないようになった。いくら人間だって、そういつまでも栄えることもあるまい。」そして、漱石はこう言うのです。「しょせん人間の運命は自殺に帰するそうだ」。
我々はこの漱石の警句を拒絶しなければなりません。それは私たちと、私たちの後に続く世代のための私たちの義務であります。
この義務を果たす足掛かりを強固にするため、私はただちにPNND・日本に数多くの新しい衆院議員が参加してくれるよう呼びかけを始める決意です。そして力を増したPNND・日本が、同じように力を増した各国の議員グループと連携を強め、時代の流れを「核軍縮」の方向に逆流させ得るよう皆様とともに祈りつつ、私のスピーチを終わります。
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