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私は身長が161センチしかない小男だが、少なくとも還暦までの人生では、病気ひとつしたことがない丈夫な肉体の持ち主だった。地方の温泉で疲れ取りのマッサージをお願いしたところ、マッサージ師が「あんたの体の筋肉はどこも素晴らしいが、とりわけ足がいい。少なくとも80才まではオレが保証する」といったのを覚えている。もっとも、そのあとに続けて「ただし、だ。アタマは知らんョ」とのたまわれたが…。
3年前、内臓の一部にわずかな異常が見つかったが、無事にクリア。今や全く問題ナシ。
その私が昨年五月、歯を磨くたびに鮮血が目につくようになった。生まれてこのかた、虫歯なんて一本も経験したことのない私。歯医者さんなんか一回も行ったことはないし、このぶんなら、いわゆる8020運動−80才になっても20本は生来の歯を持っている−の達成者になるのは間違いないという自信があった。だいたい私の一番上の兄は日本ゼトックという製薬会社(わかもと製薬系)の社長をやっていて、例の『アパガード』という歯磨きを売り出した男。弟の私もこの歯磨きの愛用者だったから、よけいに歯の健康に気を使うことなどなかったのである。
血が出始めてから日がたつにつれ、血の量が多くなってくる。
磨きすぎで、歯グキに傷でもつけちゃったせいかな、なんて思ってもみたが、国会にいたある日、ポカッと時間があいたので、議員会館の地下に歯科診療所があるのを思い出し、生まれて初めて歯科の診療台(?)に乗せられて、口をあけさせられた。
ヒトサマに口の中などを覗かれるのは初体験である。「先生、こりゃもう立派な歯周病ですョ」。「エーッ、なんです、その歯周病って…」。
「え?ご存知ない? いわゆるシソーノーロー」。
かくして私の生まれて初めての『闘病生活』が始まった。しかし、かつての油断が私に罰を下して、まず痛みをもたらすようになっていた左上奥の親シラズを抜かれ、つぎにグラグラになっていた右下奥の奥歯を抜かれ…。まさに、トホホホホ…の日々である。
過日、酒の席で親しい議員に私の苦闘ぶりを話したら、そのセンセイはこうのたもうた。「恒センセイ、やっとあんたも人の痛みがわかるようになったか」。
チキショウ、モウ、なんとでも言え。
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