いま教育基本法の改正は 06/03/01UP

 一昨年も昨年も、私はこの小論集の中で「教育基本法改正」の経過や問題点などについて説明を続けてきた。
 私が取り組んでいる最大のテーマが「教育基本法改正」であり、「年頭にあたって」で書いたように、これだけ日本の社会の「劣化現象」が深刻化してくると、やはり「教育の立て直し」しか、この国を救えるものはないという確信をいよいよ強くする。そうした意味でも私はここで現状報告をしておかなければならないと思う。
 改正をめぐる検討は自民党と公明党のそれぞれ5人と4人のメンバーによる「与党改正検討会」で、なんと毎週1回2時間を原則に、69回の議論が積み重ねられてきた。自民党のメンバーは座長をつとめる保利耕輔代議士を筆頭に中曽根弘文参院議員(ともに元文相)と私、そして党政務調査会の文部科学部会長(これまでは遠藤利明代議士)と泉信也参院議員だ。
 「検討会」での議論はほぼ完了し、昨年の衆議院解散の前に、周到かつ緻密な作業をリードしてきた保利座長は「座長とりまとめ」を作成。改正案は内閣提出を前提としてきたため、実は文部科学省の担当者の手によって、条文のほとんどの原案は書き上げられている。それが表に出てこないのは、検討作業に出された資料はすべてその場で回収されるという慎重さが功を奏したためだ。
 いったん原案が外部にでも出れば、作業の進行とともに「骨抜きされた」とか「後退した」とか「右寄り、左寄りに修正された」とかの無用の混乱を引き起こす。メンバーの中には「資料を持ち帰ってじっくり研究しなければ次回の議論が十分にできない」と”秘密性”を批判する意見もあったが、私は「いったん外部に漏れたら、すべての議論が台無しになる。すべて毎回、回収を」と率先して資料を座長の前に差し出したほどだ。

 大まかに言って、現段階で決着のついていない条項は5項目である。
 (平成18年1月未現在)
 @「教育の目標」として掲げられる重要な項目の一つとして、郷士や国に対してどのような考え方や感性を育むか、がある。「国を愛する心」と記述するか、あるいは、「国を大切にする心」と記述するか。または新たに第3の記述を考えるか。
 自民党は「愛する」を主張、公明党はこれに対して「大切にする」。「愛する」とした場合、「国」に含まれる「国民」「国土」は良いが、「統治機構」まで愛せよというのか、という理由だ。
 公明党幹部の間に、やや軟化傾向がみられなくもないが、他の政治的要素との関連もあり、なお決着がつかない。「改正」の最大の焦点。
 A「宗教教育」を一項新たに設けることに合意しているが、「宗教が情操の涵養(水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること)に果たす役割」を明記するかどうか。宗教界の多くからの主張に考慮して、自民党内に明記を求める声があるが、わが国の古来からの伝統・文北の基盤に一つながるものだけに、議論が続いている。
 B「教育行政」の項の中で、現行法にある「教育は不当な支配に服することなく」のくだりを引き継ぐかどうか。教職員の組合などがこの部分を根拠に間違った教育をしたのではないか、との視点から、「削除」の主張も強いが、未決着。関連して「県や市町村の教育委員会の役割強化」を明文化すべしなどの意見もある。
 C「教員」をはじめ「私立学校」「家庭教育」などを単独の条文で褐げ、教育全体の裏付けとなる財政措置などを、教有振興基本計画として策定することは確定しているが、具体的内容はこれから。
 Dこれら条文は検討会の作業を受けて、文部科学省が内閣提出の法律案として国会に提出するが、「前文」は国会がまとめるべきではないか、との議論。
 その場合、現行法にある「憲法の精神に則り、教育の目的を明示して」の表現をどうするか。いわゆる「憲法改正」論議の進行ともからんで、調整が必要。
 公明党の中にも「平成18年通常国会で改正の実現を」という声も出始め、要は未決着の部分について、いかに自公両党が政治判断するか、に焦点が絞られてきた。議論は明らかに最終局面に入りつつある。
 しかし、その一方、総選挙をへて、全く予期し得なかった問題が生じ、それが改正問題前進の大きなカベを形づくる結果となった。座長の保利代議士が「郵改民官化法案」に反対票を投じた反乱軍の一人だったため、党執行部は保利代護士を党から除名したのだ。加えて有カメンパーの中曽根参院議員も参院での大差可決という結果に引き金を引いたとして、党の役職停止という処分を受けている。「討論会」の幹部2人が事実上メンバーから外されたわけである。
 この「ややこしい」党問題をどうクリアして、法改正へのスタートを切るか、ようやく年が明けた1月末、新たな「検討会」の姿が見えてきた。それは座長に大鳥埋森・元文相を新たに据え、保利氏は「顧問」として、これまでの”保利ゼミ”とまで言われた研究成果の盛り込みに貢献してもらおうという構想だ。私はこれまで通りメンバーの一人。
 できる限り早期に改正の実現を・・・。この祈りにも似た思いを胸に、私は総力をあげてこのテーマに取り組む決意を新たにしている。



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